2010年度(9月)・疫学情報
2010年度,本研究事業は新たにスタートしましたが,現在,232 の医療機関に属する細菌検査部門の方々に積極的にご協力いただいております。
平素無菌的な検査材料から分離された研究対象の菌株は,6月以降9月中旬までに既に 406 株をお送りいただき,その内訳は肺炎球菌が 168 株(41.4%),S. pyogenes (GAS) が 38 株(9.4%),
S. agalactiae (GBS) が 83 株(20.4%),S. dysgalactiae subsp. equisimilis (SDSE) が 109 株(26.8%),
S. anginosus group が 8 株(2.0%)という状況となっています。全体を前回のサーベイランスと比較しますと,成人由来の肺炎球菌がやや減少し,β溶血性レンサ球菌が増加しています。
それぞれの菌種の成績を以下に簡単に記します。
図-1は肺炎球菌による発症例の年齢分布ですが,小児が62.5%,成人が37.5%の割合となっています。β溶血性レンサ球菌による発症例の成績は図-2に示しますが,GBS を除き,発症例の大半が50歳以上,特に症例数の多い SDSE と GBS 例は60歳以上が多くなっています。
それぞれのレンサ球菌の疫学成績ですが,GAS は図-3,SDSE は図-4,GBS は図-5に示します。GAS は菌株数が少ないのですが,やはり emm1 型が多く,次いで emm28 型が同率です。GAS では現在この型も流行しているようです。SDSE では stG6792 型が依然として多く分離されています。GBS では成人由来株から莢膜 Ib 型が優位に分離されています。比較のために,妊娠後期の37週前後に行なわれる GBS 保菌検査で分離された菌株の莢膜型別の成績も示しておきます。
今後,新たなデータが得られ次第,更新していきたいと考えています。
以上