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速報(平成24年度・疫学解析)~β溶血性レンサ球菌

III. β溶血性レンサ球菌

1. 収集菌株

1) 年齢分布

図-14には,β溶血性レンサ球菌による侵襲性感染症例から分離された菌として,全国から収集された菌種と症例の年齢との関係を示します。

最も多かったのはC,G群溶血性レンサ球菌(Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis: SDSE)の608株,次いでB群溶血性レンサ球菌(GBS:Streptococcus agalactiae)の467株,A群溶血性レンサ球菌(GAS:Streptococcus pyogenes)は288株でした。

これらの発症年齢をみますと,SDSE例のピークは80代にあり,2006年に実施されたサーベイランスに較べ,さらに高年齢層へシフトしていることが特徴です。次いでGBSですが,大多数が生後3ヶ月までの新生児・乳児群と,70歳をピークとする高齢者群に別れています。特に重要な点は,両群では原因菌が疫学的に異なっていることです(GBSの項参照)。

一方,GASによる発症例は小児でも少なからず認められますが,30代にやや多くなり,ピークは60代にあります。

このような菌種による発症年齢の特徴は,それぞれの菌種の病原性の強弱と密接に関連しています(病原性の項 参照)。

なお,株数が少ないためここには示していませんが,Streptococcus suisStreptococcus bovisなども送られてきています。これらの菌種による発症例は稀ですが,症例のおかれた環境(職業や基礎疾患の有無等)を把握することも大事です。

2) 疾患の内訳

図-15には菌種別に集計した疾患の内訳を示します。

GASでは敗血症(約30%)と蜂窩織炎(20%)が最も多いのですが,Streptococcal Toxic Shock-like Syndrome(STSS)および壊死性筋膜炎(necrotizing fasciitis:NF)がそれぞれ約10%と際立って多いのが特徴です。その他に化膿性関節炎や骨髄炎,種々の化膿性疾患も認められます。GASはタンパクを分解し,組織壊死を生じやすいいくつかの酵素を産生するためにこのような疾患が多いのです。ひとたび血流中に菌が侵入しますと,時間単位で急速に悪化するのはこのためです。

SDSEでは敗血症の35%を除くと,蜂窩織炎が35%,化膿性関節炎+骨髄炎が10%,その他の化膿性疾患が5%と半数例がこれらの化膿性疾患であることが特徴です。ただし,STSSや壊死性筋膜炎例は極めて少ないのです。

一方,GBSによる感染症では化膿性疾患の割合が低いのが特徴で,最も多いのは45%を占める敗血症,次いで化膿性髄膜炎が15%を占めていますが,これはGBSが肺炎球菌と同じように菌体表層に莢膜を有しているためです。

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