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肺炎球菌

肺炎球菌とは

肺炎球菌とはどのような細菌ですか?


肺炎球菌とはその名前が示すように,肺炎の原因菌として最も分離頻度の高い細菌です。特に,冬に多いインフルエンザウイルスなどの罹患後の続発性感染症(二次性感染症ともいう)の原因菌として,抗菌薬のなかった時代には致命率(死亡率)が極めて高かったことで知られています。このような続発性感染症は抗菌薬の登場によって激減し,市中で発症する肺炎(Community-Acquired Pneumonia(CAP)といいます)で死亡する例は少なくなっていました。

しかし,近年,1歳をピークとする乳幼児での発症例とは別に,70歳以上の高齢者において再び増加傾向にあることが大きな問題です(年齢分布は図-10参照)。

肺炎球菌はどのような形態学的特徴を持っていますか?



図-3に電子顕微鏡,図-4に光学顕微鏡で観察した肺炎球菌像を示します。本菌はその形態的特徴から肺炎双球菌とも呼ばれますが,電子顕微鏡ではその特徴がよく判ります。
肺炎球菌は菌体の外側に病原性の上で最も重要な多糖体でできた莢膜を保持しています。他に莢膜を有している菌種としては,GBSやクレブシェラがあります。図-4で濃青色に染まってみえるのが菌体,その外側にハロー(リング)のようにみえるのが莢膜です。殻つきのピーナツをイメージしていただくと判りやすいと思います。

莢膜は血清学的に93のタイプが報告されていますが,この莢膜がバリアーとなり,菌のオプソニン化に関与するヒト補体の菌表面への付着が阻害されます。このために,菌はヒト多核白血球による貪食作用に強い抵抗性を示します。本菌が病原性を強く発揮する主たる原因となっています。ちなみに,後述する肺炎球菌用ワクチンは,莢膜を抗原として作製されています(ワクチンの項参照)。

肺炎球菌は,その他にもノイラミニダーゼ,ニューモリジンをはじめとする多くの病原因子を産生します。

肺炎球菌の病原性はMRSAと較べても強いのですか?

正常なヒト多核白血球は,生体内に侵入した細菌を認識して取り込み,殺菌・消化します(これを細菌に対する白血球の貪食作用といいます)。貪食されやすい程病原性は一般的に低く,貪食され難い程病原性は高いとみなされます。

先ず図-5(動画・約1分)に,黄色ブドウ球菌(MRSA)と大腸菌に対するヒト多核白血球やマクロファージの貪食作用の様子を示します。この動画は位相差顕微鏡下に1秒1コマで撮影しています。黄色ブドウ球菌や大腸菌は多核白血球に次々と捕食され,細胞内へ取り込まれていくことが判ります。大きな空胞(ファゴゾーム)内へ取り込まれた菌は, 20分から30分程度で消化酵素によって速やかに殺菌・消化されていきます。

図-6(動画・約1分)は肺炎球菌に対する貪食の様子です。前半が莢膜6B型の肺炎球菌,次いで莢膜3型菌(ムコイド株)を撮影しています。多核白血球は激しく偽足(触手)を伸ばし,肺炎球菌を細胞内に取り込もうとするのですが,まったく取り込むことができません。このように,白血球の貪食に菌が抵抗するためには,莢膜の存在は非常に大きいのです。特に,厚い莢膜の菌として知られる3型菌では,激しい触手運動のためか,多核白血球そのものがダメージを受けてしまいます。
つまり,”ヒト多核白血球の貪食作用に対する強い抵抗性が,肺炎球菌感染症が短時間のうちに重症化しやすいことと関連”しているのです。

先ず図-5(動画・約1分)に,黄色ブドウ球菌(MRSA)と大腸菌に対するヒト多核白血球やマクロファージの貪食作用の様子を示します。この動画は位相差顕微鏡下に1秒1コマで撮影しています。黄色ブドウ球菌や大腸菌は多核白血球に次々と捕食され,細胞内へ取り込まれていくことが判ります。大きな空胞(ファゴゾーム)内へ取り込まれた菌は, 20分から30分程度で消化酵素によって速やかに殺菌・消化されていきます。

図-6(動画・約1分)は肺炎球菌に対する貪食の様子です。前半が莢膜6B型の肺炎球菌,次いで莢膜3型菌(ムコイド株)を撮影しています。多核白血球は激しく偽足(触手)を伸ばし,肺炎球菌を細胞内に取り込もうとするのですが,まったく取り込むことができません。このように,白血球の貪食に菌が抵抗するためには,莢膜の存在は非常に大きいのです。特に,厚い莢膜の菌として知られる3型菌では,激しい触手運動のためか,多核白血球そのものがダメージを受けてしまいます。
つまり,”ヒト多核白血球の貪食作用に対する強い抵抗性が,肺炎球菌感染症が短時間のうちに重症化しやすいことと関連”しているのです。

図-5(動画・約1分):
黄色ブドウ球菌 -白血球の貪食作用

図-6(動画・約1分):
肺炎球菌6型 -白血球の貪食作用

肺炎球菌は,分離されればすべて原因菌ですか?

いいえ,違います。呼吸器感染症を引き起こす細菌に共通していることですが,本来無菌的な血液や髄液から分離された場合にのみ,起炎菌(原因菌)とほぼ断定できます。常在細菌が混在している上咽頭や咽頭/扁桃,あるいは喀痰を検査材料とし,それらから分離された場合には,臨床症状や血液検査値,そして胸部XP所見等を含めた総合的な判断が必要となります。

特に小児の場合には,健常児であっても上咽頭には肺炎球菌やインフルエンザ菌が常在していることが多いのです。保育園児の90%は多かれ少なかれこれらの菌を保菌しています。


図-7に示すように,一般には気道系ウイルス(RSV,インフルエンザウイルス,パラインフルエンザウイルス,ライノウイルス等多数知られています)の感染に伴って異物を排出する線毛上皮細胞が損傷を受けますと,これらの菌が定着して増殖します。そして,その菌が下気道へ落下しますと気管支炎や肺炎,耳管を通じて中耳へ侵入しますと急性中耳炎などを引き起こします。

免疫学的に未熟な乳幼児,あるいは免疫能が次第に低下する高齢者では,このような発症例が多くなります。そして,時にそれらの感染症から菌が血液中へ侵入すれば敗血症,髄液中へ侵入すれば化膿性髄膜炎を発症するのです。

市中型肺炎や化膿性髄膜炎の主な病原体にはどのようなものがあるのですか?

市中型肺炎や化膿性髄膜炎の原因となる細菌は,院内感染で問題となる細菌の種類とは異なり,また発症年齢によっても異なることが知られています。


表-1には,抗菌薬治療が必要な細菌による市中型肺炎と,化膿性髄膜炎の主な原因細菌をまとめてあります。小児に肺炎を引き起こす細菌としては,肺炎球菌が最も重要で,次いでインフルエンザ桿菌マイコプラズマ・ニューモニエが挙げられます。まれにクラミドフィラ・ニューモニエやβ溶血性レンサ球菌による場合もあります。

化膿性髄膜炎の原因菌は発症年齢によって大きく異なります。生後3ヶ月以内では出産時の産道感染によるGBSや大腸菌が原因の症例が多いのですが,それ以降になりますと,インフルエンザ菌(95%は莢膜b型のHibと呼ばれるインフルエンザ菌)と肺炎球菌による症例が全体の90%を占めるようになります。

成人の肺炎例では,慢性の呼吸器疾患を持つ方とそうでない方では原因菌が異なりますが,共通しているのは肺炎球菌インフルエンザ桿菌が重要で,その他に緑膿菌やクレブシェラ等のグラム陰性桿菌,あるいはレジオネラ・ニューモフィラによる例もみられます。

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