収集菌株と送付を受けた医療機関
2010年4月から2011年3月までの1年間に,343医療機関から送付を受けた侵襲性感染症由来株は総計1,295株でした(図-1)。すべてが平素無菌的な検査材料(髄液,血液,胸水,関節液,閉鎖性膿汁,深部組織など)から分離されています。
その内訳は,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が633株(48.9%),A群溶血性レンサ球菌(GASと略される;正式名は Streptococcus pyogenes)が131株(10.1%),B群溶血性レンサ球菌(GBSと略される;正式名は Streptococcus agalactiae)が232株(17.9%),C,G群溶血性レンサ球菌(SDSEと略される;正式名は Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis)が271株(20.9%),その他のレンサ球菌が28株(2.2%)でした。これら菌種別の割合を2006年度の収集株(n=987)と比較しますと,それぞれの菌種の割合にはほとんど変動がみられませんでした。レンサ球菌の中でもGASに比べてGBSとSDSEが多いのは,高齢者発症例が増加しているためで,最近の特徴でもあります。
菌株をお送りいただいた医療機関の内訳は,地域の基幹病院が圧倒的に多く,次いで私立大学医学部附属病院でも第三次救急医療機関となっている施設です(図-2)。つまり,これらの細菌による市中型侵襲性感染症例の多くは,比較的短時間のうちに重症化し,地域医療を担う基幹病院を受診していることが明らかです(受診科の詳細は図-12参照)。