I. 収集菌株
2010年4月から2012年10月までの約2年半に,343医療機関から送付を受けた侵襲性感染症由来株は合計2,500株でした(図-1)。すべてが平素無菌的な検査材料 (髄液,血液,胸水,関節液,閉鎖性膿汁,深部組織など) から分離された菌株です。
内訳は,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が1,073株(42.9%),A群溶血性レンサ球菌(GAS;Streptococcus pyogenes)が287株(11.5%),B群溶血性レンサ球菌(GBS; Streptococcus agalactiae)が467株(18.7%),C,G群溶血性レンサ球菌(SDSE; Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis)が608株(24.3%),そしてその他のレンサ球菌といった割合でした。
菌種別の割合を2006年度の収集株(n=987)と比較しますと,それぞれの菌種の割合はほぼ同じで変動は認められませんでした。後述いたしますが,レンサ球菌のなかでもGASに比べてGBSとSDSEによる症例数が非常に多いのは,高齢者の発症例がさらに増加していることによるものです。
菌株をお送りいただいた医療機関の内訳は,地域の基幹病院,すなわち市立・市民病院,県立病院,各地の赤十字病院,その他財団系の病院が圧倒的に多く,次いで私立大学医学部附属病院,なかでも第三次救急医療機関となっている検査室を有する施設でした。つまり,これらの細菌による侵襲性感染症の多くの例は,地域医療を担う基幹病院を受診していることになります。