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最新疫学情報

2010年度(10月)・肺炎球菌疫学情報

肺炎球菌に対する最新の分子疫学情報(2010年5月末から10月末まで)を提示します。

対象菌株

2010年5月末から10月末までの間に,全国のサーベイランスにご協力いただいている医療機関より肺炎球菌210株の送付を受けました。これらはすべて侵襲性感染症由来株です。疾患は敗血症,化膿性髄膜炎,化膿性関節炎などで,菌は血液,髄液,胸水,関節液など本来無菌的な検査材料から分離されています。

内訳は,小児由来が121株,成人由来が89株となっています。すべての菌株について,肺炎球菌ワクチンと関連する莢膜型(詳細は「肺炎球菌ワクチン」の項参照)と,遺伝子レベルでの薬剤耐性型(詳細は「薬剤感受性と遺伝子型」の項参照)を調べました。

小児由来株

成績は図-1に示します。莢膜型では6B型が圧倒的に多く,次いで14,19F,23F型の順となっています。全分離株に対する7価コンジュゲートワクチン(PCV7)”プレベナー®”のカバー率は74.4%です。前回の2006-7年の成績(図-21参照)と比較しますと,この4つの型はほとんどが耐性菌,すなわち赤で示したgPRSPでした。全菌株に占めるgPRSPの割合は58.7%と計算され,耐性化の傾向が一段と鮮明化しています。

その他に,6Aや19A型が次第に増加してきている点も注目されます。ちなみに,13価コンジュゲートワクチン(PCV13)のカバー率は87.5%です。

 なお,PCV7が定期接種化された国々では6Aや19A型の菌が増加してきており,問題化しています。交通網が発達した今日,我が国もその影響を受けているように思われます。

成人由来株

成績は図-2に示します。分離頻度の高い莢膜型の順にならべてありますが,その成績は小児由来株とは明らかに異なっています。分離頻度の最も高かったのは6B,次いでムコイド型の3,19A,14,23F型の順でした。前回の成績(図-22参照)で最も多かった12F型は,今回数株しか認めませんでした。恐らく当時,12F型は国内の成人の間で流行していた型と思われます。

成人では小児に較べさまざまな莢膜型の肺炎球菌によって発症することが特徴ですが,その中に占めるgPRSPの割合が33.7%へと増加してきている点が注目されます。

ちなみに,成人由来・肺炎球菌に対するニューモバックスNP®のカバー率は80.9%となります。

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2023年現在:
東京医科大学微生物学分野
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