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肺炎球菌

肺炎球菌ワクチン

ワクチンの基礎となる莢膜型(serotype)は何種類あるのですか?



肺炎球菌の莢膜は病原性と深く関わっていることを既に述べましたが(肺炎球菌とはの項参照),表-5に示すように莢膜型(serotype)は21のグループに属する68種と,25の単一型の計93型に分類されています。

分離菌の莢膜型は,デンマーク(Statens Serum Institut)より購入した抗血清を用い,菌と抗血清とを反応させて顕微鏡下に判定します。莢膜膨化反応がみられた抗血清の型が被験菌株の莢膜型となります(図-4参照)

莢膜を失った株(型別不能株)も稀にみられますが,それらの菌は病原性も同時に失っています。

莢膜型を調べることがなぜ重要なのですか?

ヒトがある莢膜型の肺炎球菌に感染しますと,その後には免疫(抗体)が獲得され,同じ莢膜型の菌には感染しなくなります。しかし,別の莢膜型の菌が侵入してくれば免疫がないので感染が成立し,発症することになるのです。

このため,肺炎球菌による重症化や発症を予防するために,あらかじめさまざまな莢膜型の肺炎球菌に対する免疫力を高めておくことが必要で,その目的のために開発されたのが肺炎球菌ワクチンです。

肺炎球菌ワクチンにはどのようなものがあるのですか?

 現在,肺炎球菌ワクチンについては多くの情報がウェブサイト上から得られますが,我が国では小児用 ”プレベナー®(2009年承認) “ と成人用 “ニューモバックスNP®(1988年承認,2006年改変)” が市販され,接種が可能となっています。

図-33に示すように,プレベナー®は7価結合型ワクチン(PCV7)といい,小児に重症感染症を惹起しやすく,また耐性菌の多い莢膜型7種の肺炎球菌から莢膜が精製され,抗原として含まれています。1歳以下は抗体獲得が非常に難しい時期のため,無毒化したジフテリアタンパク(CRM197)を莢膜に結合させ,抗体を獲得しやすいよう工夫されています。それでも初回接種を含めて生後2ヶ月以降1 - 2ヶ月間隔で3回,1歳を過ぎてもう1回追加接種しなければなりません(詳細はhttps://pfizerpro.jp/cs/sv/prevenar/prevenarC_D/generalcontents/1259671083502 を参照)。

ニューモバックスNP®は23種の精製された莢膜を抗原として含んでおり,23価ポリサッカライドワクチン(PPV23)といいます。このワクチン接種は1回のみですが,経年的に抗体が減弱します。このため,初回接種から5年以降に再接種が認められています((社)日本感染症学会の「肺炎球菌ワクチン再接種に関するガイドライン(PDF)」)。(詳細はhttp://www.banyu.co.jp/content/hcp/productinfo/faq/pneumovaxnp/index.htmL を参照)。

小児用“プレベナー®”ですべての肺炎球菌感染症を予防できるのですか?

残念ながらそうではなく,4,6B,9V,14,18C,19F,23Fの莢膜型菌による感染症のみに有効なのです。

図-34は,小児由来株をワクチンタイプと非ワクチンタイプに分け,それぞれ分離頻度の高い莢膜型から順に並べています。併せて,その中に占める感性菌(gPSSP),軽度耐性菌(gPISP),および耐性菌(gPRSP)の割合も示してあります。6B型が圧倒的に多く,次いで23F,19F,14型ですが,これらの莢膜型株には耐性菌が非常に多いことが特徴です。

全菌株に対するプレベナー®のカバー率は71.8%となりますが,その他に臨床的に重要な19Aや6A型が残念ながらカバーされていません。次世代型ワクチンとして既に米国等で使用されている13価コンジュゲートワクチン(PCV13)の日本株に対するカバー率は88.0%となります。PCV13は19A,6A型に加えて,小児急性中耳炎そして高齢者の肺炎から高率に分離され,しかも重症化しやすい3型もカバーできます。

成人用ニューモバックスNP®は肺炎球菌感染症をどの程度予防できるのでしょうか?

成人由来株に対するニューモバックスNP®のカバー率は図-35に示しますが82.7%となっています。分離頻度の高い莢膜型の順に並べてありますが,菌の莢膜型は小児由来株とは明らかに異なっています。分離頻度の最も高いのは3型で,その大多数が軽度耐性のgPISP(pbp2x)でした。次いで小児で最も多かった6B型,続いて14型,23F型となっています。成人ではさまざまな莢膜型の菌によって発症していることが特徴です。

ワクチンカバー率には経年的な変化はないのですか?

経済のグローバル化,交通網の発達に伴い,人々の交流が激しくなってきていることを背景に,それに伴って新たな菌の流入あるいは流出が生じており,残念ながらカバー率は次第に低下する傾向にあります。


2006年度に今回とほぼ同じ規模で侵襲性感染症由来の肺炎球菌を収集し解析していますので,その比較した成績を図-36(小児)と図-37(成人)に示します。新たな莢膜型の菌が分離され始めていることに気づきますが,その他に,成人の間で2006年に最も分離頻度の高かった12F型が2010年には激減しています。推論になりますが,高齢者層が12F型菌に暴露されたことがなく抗体を持っていなかったか,あるいは過去においてこのタイプの菌に暴露されていても,抗体価の上昇が特別悪かった等が考えられます。

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